茜色の太陽が沈む夕暮れ時、長い影がアスファルトに伸びる。二つの影は私たちの足先から前方へと長く尖り、対となる本体に追随していた。今にも立ち上がり、一個体として動き出しそうな不気味ささえ漂わせながら。
視線の先で並ぶ影法師は肩を寄せ合うように、ゆらゆらと揺れる。
「久しぶりにチビ太の屋台にでも行くか?」
カラ松くんの軽快な声に、私の意識は現へと引き戻された。呆けていたことを悟られないよう、緩やかに頷く。
「いいね。おやつ食べ過ぎたから、食べたいっていうより飲んで話したい気分」
「フッ、ミートゥーだぜ。気が合うな、ユーリ。
まぁ、地上に降り立ちし美しきミューズを満足させられるのは、ガイア広しと言えどこのオレくらいなものだしな」
自分の胸元に片手を当て、カラ松くんは感慨深げに息を吐いた。ときどきかましてくる大仰な言動は未だ健在で、私のスルースキルも適度に磨かれていく。
彼の演技は、高ぶる感情の表現方法の一つであったり、照れ隠しであることも多い。理由を把握できるようになってからは、可愛いと思うようにもなった。
私は早足で二歩ほど前に出る。オレンジ色が溶ける地面の上に、闇から抜け出たみたいな彼の影。腕を額に当てたポーズが綺麗に再現されている。
「シャドウもイケてるだろ?」
私の視線に気付いたカラ松くんが、立ち止まって自画自賛する。躊躇なくそんな台詞が吐けるのは彼くらいだろう。
「本物の方がいいよ」
「…へっ!?」
片足で、彼の影を踏む。ちょうど胸元辺りを、軽く。
「私の推しは、本体の方がずっとずっと可愛いんだから」
断言するように告げたら、カラ松くんは目を瞠った。その顔の赤さは夕焼けのせいなのかそうでないのかは、もう判断がつかない。手の甲で口元を隠されたから、余計に。
「そっ、そういうことを急に言うのはズルくないか!?」
「だって本当のことだし」
影は本体の形を模った付属物に過ぎない。異形とも言える。
私は跳ねるようにして彼の前に躍り出た。
「それに、こうやって突然褒められたら──忘れられなくなるでしょ?」
強く印象に残して。記憶に刻んで。私を。
まるで刻印だと内心で苦笑したところで、カラ松くんが私の腕を取る。顔が至近距離まで近づいた。
「忘れないどころの話じゃない。
これ以上オレを夢中にさせたいとは、思いの外貪欲なレディなんだな」
「欲に際限はないんだよ。満足感なんてひととき持続すればいい方。でも反面、それが行動の原動力にもなったりするから一概に悪とも言えない」
「なるほど、一理ある。
さすがはハニーだな。貪欲で聡明で──しかもキュートだ」
カラ松くんが目を細めて微笑む。
私の一切合切を見透かさんとする、意志の強い瞳だった。
「そういえば、この前ユーリが夢に出てきたぞ」
松野家二階の六つ子の部屋で、カラ松くんからウーロン茶のグラスを受け取りながら、そんな話を聞かされた。私の顔を見て唐突に思い出した、そんな顔だ。
「私が?」
「ああ。ほら、先週会っただろ?その日の夜だ。
オレと離れたくないばかりに、夢の中にまで会いに来るとは大胆なハニーだ」
前髪を指先で横に払って、モテる男はツライぜとばかりに溜息を吐く。
「ふふ。それで、どんな夢だったの?私変なことしてなかった?」
夢の内容は支離滅裂なことも多い。現実世界では決して起こり得ないシチュエーションが忙しなく展開され、いずれも脈絡はない。
そして多くは、目が覚めたら忘れてしまう。
「確か…夜に突然うちに来て、オレを攫っていったぞ。どこへ行くかオレが訊いてもユーリは笑うばかりで要領を得なかった。
しばらく走って、辿り着いたのは歌舞伎町だ。ここで朝まで飲み明かそうと言ったユーリのあの楽しそうな顔は、今も目に焼き付いてる」
彼は透明感のある甘栗色の液体で、喉の渇きを癒やす。過去を懐かしむような遠い目は、どこでもない彼方に向けられていた。
「何ともディープだね」
「悪くない誘いだったぞ。誘い方がもう少しセクシーなら完璧だった」
他人の夢に無許可で出演させられた挙げ句の駄目出し。解せぬ。
「絶対にあり得ない、っていう展開じゃないのがまた微妙なところだね」
出演料寄越せという本音は胸にしまっておく。
「ユーリがすごく楽しそうで、だからオレにとっては───いい夢だった」
不意に訪れた静寂を、私たちは心地良さと共に受け入れる。言葉を紡ぐことが無粋になる気がして、私は半分ほど中身の減ったグラスに両手を添えた。
しかし、静寂はカラ松くんによって早々に破られる。彼が下ろした手が床に置かれていた雑誌に触れて、くしゃりと音を立てたからだ。
「あ、ごめん。変なところ置いてたね」
犯人は私だ。不定期に購読しているファッション雑誌で、カラ松くんもグルメや有名俳優のインタビューといったコーナー記事を読みたがるから、ときどき私が新刊を持ってくる。
「…おまじない?」
雑誌を手に取り、カラ松くんが呟く。表紙に『あなたの恋を叶える!読者が試した効果のあるおまじない三十選』と大々的にキャッチコピーが書かれている。
「うん、懐かしいよね。久々に聞いたよ、おまじないって言葉。まだあるんだね」
己の未来を非科学的存在に託し、結果が出るまでただひたすら胸を高鳴らせる。自分の力では到底成し得ない高望みをする時に、好転を祈って私たちは非科学的なそれに縋るのだ。感覚的には神頼みに近いが、一定の行為を成して誓いを立てる分、神よりも身近な存在である。
「カラ松くんは、神頼みってしたことある?」
私の問いに、彼は顔を上向けた。幼い頃の記憶を手繰り寄せる。
「受験の朝にトンカツを食べたことはあるが…」
「願掛けかぁ。おまじないと言えないこともないかな」
一般的におまじないは、神仏などの神秘的な何かに頼り、願いを叶えようとする術を示す。
「こういうのはガールの得意領域じゃないのか?」
「確かに。小学生の頃に一度は流行るよ」
女子は男子に比べると早熟で、中学年高学年ともなると、恋愛をはじめ非科学的なことにも興味を示す多感な時期だ。一つのことに向ける熱量も、大人とは比べ物にならない。
「席替えで好きな人と席が近くなるとか、好きな人と話せるとか、そういうのは特にね。根拠は何もないのに、おまじないをすれば何とかなりそうな気がしてたよ。運良く叶ったらすごく嬉しくてさ」
カラ松くんがムッとするのが分かった。感情はすぐ顔に出る。
「ユーリは──」
ずい、と上半身が私に向けられる。
「ユーリはそういう…恋愛絡みのおまじないをしたことがあるのか?」
好きな人と隣の席になれますように。好きな人と話せますように。
接点を作る努力よりも、偶然に運命を委ねて一喜一憂する。経験を重ねた今でこそ、玉砕も覚悟の上で、不確かな運に任せずに自らの手で掴み取りに行く方を選ぶけれど。
「どうだろ、覚えてないな。あったかもしれない」
私は曖昧に笑って、首を傾げた。
カラ松くんにとっては納得できる反応ではなかったらしく、不服そうに眉間に皺を寄せる。
「オレはそういう…おまじないの類には疎い方だったな」
以前聞いた六つ子の小学生時代を思い出す。ひたすらに騒々しい日々。
「悪事を働くのに全力投球だった」
さすがは六人の悪魔。
「イヤミを不幸のどん底に叩き落とすために黒魔術くらいはやったかもしれんが」
おまじないの上位互換を幼少時に経験済みとは恐れ入る。話の展開考えて暴露しろ、怖いわ。
「あ、でもアレだぞ、黒魔術は成功前提の儀式であって、その後でちゃんと物理的にイヤミは始末したから」
カラ松くんは慌てて弁明するが、弁明になってない。イヤミさんとどんな確執があったらそんな凄惨な処刑に繋がるのか。黒魔術もとんだ風評被害だ。
「あとは、遠足前のてるてる坊主とかくらいだな」
「あー、てるてる坊主は定番。やるよね」
和やかな展開に移行したので、先程のぶっちゃけ発言はスルーさせてもらおう。ありがとうてるてる坊主。
カラ松くんがパラパラと雑誌を捲る。開いたのはおまじない特集だった。恋愛に関するものがメインだが、金運や仕事運といった読者層が興味を持ちそうな項目に関しても幾つか紹介されている。
私も横から覗き込む。
「カラ松くん、見てこれ。面白そうだよ」
「どれどれ」
私の指先を辿った先を、カラ松くんの目が追う。
「…『関係が進展するおまじない』?」
「効果じゃなくて、手段の方。腕にボールペンで相手の名前を書いた上に絆創膏を貼って、三日間剥がれないようにするってヤツ」
単発的な行動で済むまじないが多い中、少々根気を要する手法だ。絆創膏が剥がれると効き目がなくなってしまうと書かれているから、取り扱いには細心の注意を払わなければならない。
二人の関係を進めるには、何らかのきっかけが必要なこともあります。そんな「恋のきっかけ」を引き寄せてくれるおまじないです。
そんな謳い文句と共に。
トリガーなんてなくとも進展するものはするし、しないものはしない。冷静に文句をつける余裕はあるのに、なぜか引き付けられるキャッチコピー。
このおまじないのおかげで放課後に彼と二人きりになって告白されました、なんて信憑性を疑う読者コメント付きだ。
「やろう」
次男坊が何か言い出したぞオイ。
「やろうって……これを?」
カラ松くんは私の問いに頷き、悩ましげな吐息を吐きつつ腕を組んだ。
「抗えないデスティニーで引き寄せられているオレとハニーには不必要この上ないが、効果があると豪語するこのおまじないとやらの効力を、この目で確かめてやるのもやぶさかじゃないと思ってな」
呆気に取られる私をよそに、カラ松くんは畳み掛ける。展開に思考が追いつかない私は、口を半開きにしたまま言葉を失っていた。
彼が期待したであろう反応を返さなかったためか、カラ松くんは顔を朱に染めて、動揺しつつ両手を眼前で大きく振った。
「───な、なんて。
…っ、すまん、調子に乗った…聞かなかったことにしてくれ」
気まずそうに視線を逸らすから、私は咄嗟にかぶりを振る。
冗談じみた口調の中に、見え隠れしていた本音。湖に落ちた一本の髪の毛のようなそれを、私は掴む。
「違う、ごめん、違うの。その、ほら…もう何年もこういうおまじないからは縁遠かったから、実践するイメージがつかなくて、驚いただけ」
だから。
「いいよ、やろう」
「ユーリ…」
カラ松くんははにかんだ笑顔を見せてから、私の気が変わらないうちにと階下から必要な道具、ボールペンと絆創膏を取ってくる。
そもそもおまじないは呪いとも書くように、相手に分からないように行うのが基本だ。事前に身を清めたり丁寧に行う必要性など、呪術的な意味合いも多分にある。ポジティヴなイメージが先行するおまじないだが、呪い(のろい)とは表裏一体と言えるだろう。
だから、相手に実施を宣言した上で目の前で行うこのおまじないに、どれほどの効力が見込めるかは定かではない。
ないよな、普通。
肘の近くに、ボールペンで相手の名前を書く。本人を目の前にして体に名前を書く行為は何となく気恥ずかしいものがあった。細いペン先が肌を滑る感覚はくすぐったくて、反射的に身を捩りたくなってしまう。
「三日後に絆創膏を剥がしたら、その日から一週間以内に相手との間に何かが起こる…ねぇ」
「オレとユーリが同時にやるんだから、勝率は二倍だな」
やり方が根本的に間違ってるから勝率もクソもないと思うが。
私が乾いた笑いを溢すと、カラ松くんは絆創膏を差し出しながら意味ありげに笑みを作る。
「起こらなければ、起こせばいいだけの話だ」
関係性を進展させるための何かを。
「帳尻を合わせればいい。そうすれば、結果的には叶ったことになるだろ?」
「強引すぎない?」
「大義名分になるじゃないか。自然と起こればそれはそれで問題ないし、仮にオレがユーリに何かしたところで、おまじないのせいだと言える」
静かに語る彼の腕に私は触れる。袖を捲ったパーカーに隠れる位置に、絆創膏で覆われているとはいえ、私の名が書かれているのは不思議な感覚だ。
間接的な接点。所有物の証みたいな。
「それ、事前にネタばらししたら意味ないんじゃない?
黙ってたら、私を体よく騙せたかもしれないのに」
「そこがミソだ、ハニー」
カラ松くんはニヤリとほくそ笑んだ。
「一週間、きっとユーリは何が起こるのかとドキドキするだろ?」
右手の親指と人差し指で、私の髪を摘む。微かに皮膚が引っ張られる感覚が、今この場面が現実だと私に知らしめる。
「オレのことで頭がいっぱいになることが、オレの思惑だ」
呆気に取られる私をよそに、彼の口上は続く。
「──なんて言ったら、もうユーリの頭からオレが離れなくなったんじゃないか?
腕に名前を書いてることだし、絆創膏を見るたびに思い出すはずだ。まるで───呪いみたいに」
のろい。
それこそ呪術的じゃないか。
一笑に付そうとして失敗する。目には見えない魂胆が言葉に乗って、私の思考を呪縛する。
「でもそれは…諸刃の剣だよね」
私は彼の頬を両手で包み、にこりと微笑みかけた。
「私にかけた呪いは、カラ松くんにもかかってるんじゃない?」
まじないは両者に施されているから、私たちの立場は同等だ。どちらかが優位なんてない。
「───っ!」
案の定、カラ松くんの頬が見る見るうちに赤く染まる。頬に触れる私の手にも、その熱が伝わってきた。顔を背けようにも、私の両手がそれをさせない。逃さない。
「……咄嗟のカウンターにしては上出来じゃないか、ハニー」
「知ってると思うけど、私はされるよりする方が好みなんだよね」
「一筋縄ではいかない、というわけか」
「私を出し抜こうとするなら、慣れない挑発はしない方がいいかも」
けれど、悪くない案ではあった。私の恥じらいを誘発し、冷静さを失わせる効果が発揮できていれば、今頃は彼の手の上だったに違いない。
しかし申し訳ない、私は攻めだ。
「私が一週間の間にカラ松くんに何かしても、免罪符になるってことだよね?」
直後、カラ松くんの顔が赤から青になったことは、言うまでもない。
「……早まったかもしれん」
がっくりと肩を落として項垂れるカラ松くん。
「まぁまぁ、とにかくまずは三日間の第一関門を突破しないとね。絆創膏を剥がれないようにするって意外と大変だよ」
「フッ、その辺はノープロブレムだぜ、ハニー」
カラ松くんは軽快に指をパチンと鳴らす。
「水に強い絆創膏だ」
さすが抜かりない。
「とはいえ、オレはブラザーたちと毎日銭湯通いだからな。怪しまれないよう、細心の注意を払う必要はある」
三日に渡り、五人の目を欺くのは決して容易いことではない。妙なところで感の鋭い連中だ。貼り替えられない絆創膏を怪しむ可能性は十分あるし、何なら強引に剥がしにかかる危険性も孕んでいる。
カラ松くんはようやく事の重大性に気付き、ハッと顔を上げた。
「…これ、何気に難易度高くないか?」
今更気付いたか、とんだドMめ。
「いや待て、乗り越えるべきハードルが高ければ高いほど、得られる対価も同等に高いはずだ。ハイリスク・ハイリターン……要は、オレの力量が試される愛の試練というわけか。いいだろう、受けて立つ!」
楽しそうで何よりだ。私はいち抜けたい。
そうは思うものの、互いの腕に相手の名を刻み、特定の期間誰の目にも触れないよう隠す行為に、意味もなく背徳感を感じるのはなぜだろう。悪事を働いたわけでも、道徳に反したわけでもない。
ああ───なるほど、これが『まじない』か。
信じる信じない以前の、これがまさに。
「言っておくがユーリ、オレはドリームを追い求める探求者だが、同時にリアリストでもある」
カラ松くんが口を開くので、私は彼の目を見る。
「つまり、何だ…おまじないなんて非科学的なもの、普段はやらない男なんだぞ」
「あ、うん、言ってたね」
疎い方だったと。念押しされるまでもなく、記憶している。
「特に相手ありきの願望に対しては」
窓から差し込む日差しがカラ松くんの瞳を照らして、キラキラと輝く。どこからともなく甲高い鳥の鳴き声が聞こえる。
「本気で振り向いてほしいと思う相手には、得体の知れないものなんかに頼らずに自分の力で何とかしたい。そう思って努力してる」
静かな空間に響く、ひどく耳障りのいい声。
「……つもりだ」
ユーリを駅まで見送って部屋に戻ると、自室には誰の姿もなく、自分たちが出た時のままだった。空になったコップを片付けようとして、ソファの隅に放置された雑誌に目が向く。ユーリが持ってきたものだ。
「忘れていったのか…」
独白して、拾い上げる。
「後でユーリに伝えておこう」
ソファに腰を下ろし、パラパラと捲る。女性誌はコンテンツが充実しているし、ファッションの幅も広く、学びも多い。今回のおまじない特集は、老若男女問わず一定数いる占いや開運に興味を持つ層をターゲットにしているのだろうか。そんなことをぼんやり考える。
ふと、ページを捲る手が止まった。特集の中に『影を踏む』おまじないを見つけたのだ。
この前、夕暮れ時に影の話をした。影もイケてるだろなんて気取ったら、本物の方がいいと返された、あの時──
彼女は、カラ松の影を踏んだ。
視線を地面に落とし、偶然を装ったような澄ました顔で。
「そうだ…それで、その日の夜にオレは───」
ユーリの夢を見た。
影を踏むおまじないの効果は───相手に興味を持ってもらう。
カラ松は目を瞠ったが、やがて肩を揺らす。
「興味なんて生易しいもんか」
そんな漠然とした対象だったのは、ほんの一時だけだった。それどころか、最初から心が奪われていたと言っても過言ではない。
カラ松はそっと雑誌を閉じる。ユーリが施した術に気付いたことを、彼女に悟られてはいけないと思ったのだ。雑誌は忘れていったのではなく置いていったのではないか、そんな猜疑心にさえ駆られる。
告げたら最後、彼女の手のひらから二度と降りられなくなるような、そんな気さえして。
けれど、今はもうそれさえも───
「そういうことか……ユーリ」
ソファから立ち上がる。もう半時間もすればユーリが自宅に着く頃合いだ。時間を見計らって電話をかけよう。
「これがおまじないの効果ってヤツか」
別れたばかりなのに、どうしようもなく彼女に会いたいのは。